最初に作ったケーナ

気まぐれにケーナを始めて、少しずつ吹けるようになり、1オクターブ、2オクターブとだんだんと広い音域が出せるようになっていき、徐々にケーナという楽器にのめり込んでいくうち、ふと「穴を開けるだけだから、自分で作れるんじゃないか」と思い立ったわけです。

ケーナというのはもともとは「カーニャ」と呼ばれる、南米に自生する葦の一種で作られ、それが「ケーナ」という楽器の名前の由来になっているそうです。もちろん、そのカーニャという葦は日本には生えていませんので、日本にある素材で一番近い物はもちろん「竹」です。
ただ思いのほか、竹はたくさん、色んなところに生えているものの、ケーナに適した太さ、節の長さを備えた竹がなかなか見つかりません。
そんなとき昔からの知人が、「整備のボランティアで参加している緑地に、良い竹がある」と紹介してくれたのが、町田市鶴川の緑地でした。
タダでこっそり竹だけもらって行くのも気が引けたので、自分も緑地整備ボランティア活動に参加し(竹を手に入れる、という下心、厳密にはボランティアじゃないですね・・)そこで冬の良い頃合いを待って、一本頂いたのが「篠竹(しのだけ・しのちく)」という種類の竹でした。

篠竹というのは女竹の一種で、昔から籠を編んだりするのによく使われている竹だそうで、しなやかなで、多分竹の種類の中ではアンデスのカーニャに一番近い素材だと思います。(カーニャはもっと柔らかいですが)
その篠竹を持ち帰り、のこぎりとキリとヤスリなどで見よう見まね、手探りで、どうにか完成させたのが僕が一番最初に作ったケーナです。
当然、最初に作ったケーナは音程の精度もとても楽器と言えた代物ではありませんでしたが、その後少しずつナイフやヤスリで穴を削ったり、手探りで調整していくうち、だんだんと楽器として使える物になっていきました。

その最初につくったケーナで、その竹が生えていた緑地で、始めてみんなに演奏を聴いてもらったときは音色が空へ昇っていくような、なんだか自然と一体となり、木々と語り合えたような気がして、とても心地が良かったのをよく覚えています。
そしてさらにケーナが好きになり、ケーナ作りとケーナの演奏にますます没頭していくわけです。
その緑地では今も年に1度、小さなコンサートを行っています。


この緑地との出会いが無ければ、ケーナを作るということも最初の思いつきに終わっていたかもしれないし、そこまでケーナに没頭していなかったもしれません。
住宅地の中にぽつんと残る、多摩丘陵のなごりの一角ですが、開発の進むなかでも少しでも、こういうところが残っていってほしいものです。
僕もこのケーナの音色を与えてくれた緑地に、自然に、感謝の気持ちとともに、何か恩返しをしなければと常々思っています。
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